【ピースコンバットフェス】銃器インストラクター Chris Costa 氏来日記念インタビュー ③
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ジミー・ヘンディリクス:
武道と同じで、昔は空手や柔道などに分かれていたものが、今では総合格闘技になったようなものだ。現代で通用するには非常に多くのものを組み合わせて、新しいファイティングスタイルを作っていかなくちゃいけない。全ては変化しているんだ。変化していないということは後れをとっているということだよ。
MilitaryBlog:
変化がないということは問題があると考えて良い?
ジミー・ヘンディリクス:
その通り。「これは新しいね」と思って見ているものは、もう古いものなんだ。新しいものはどんどん出てくるしそれが進化というものだ。スタンスやグリップが変わるのは、よりよい方法を発見したからなんだ。それをまた取り込んでいく。
クリス・コスタ:
今の仕事でひとつ良いのは、何かを変えても関係者で話し合って審査を受ける必要がないことだね。
それから普通の人は到達度をベースに考えてしまう。白帯から黒帯に向かうみたいにね。どこかに到達したらもうそれでいいと思ってしまうものだ。「アメリカにはどこにでも『アメリカで1番』の中華料理屋がある」ってジョークがあるけど、要するにみな1番だと思っているし、1位を目指してがんばっている2位の中華料理店はないんだ。
僕らは違う。いつも自分たちが2位だと思っている。常に1位になろうと思っているけれども辿りつけない。黒帯はないんだ。常に努力して進化を続け、挑戦者でなければいけない。
クリス・コスタ:
昨晩のパーティで「自分もまだ生徒のつもりでいる」と言った。今も毎日学びがある。教えることで生徒たちからも学ぶんだ。最近は射撃よりもそうしたコミュニケーションからのほうが得るものが多いかもしれない。
生徒たちはやってきて、苦闘する。彼らにやり方を教えて、動かして、そして彼らは撃つ。そういうことを繰り返して、質問したり答えたりして、その答えを頑張って理解しようとしてくれる。
生徒達とコミュニケートする方法がわかった時は嬉しいね。そうすると彼らはより早く物事を学ぶようになる。僕はそれが狙いだ。教えている知識自体に意味はない。知識をスキルとするには練習が必要で、理解を早めることができれば、より良く、より速いというレベルにすぐたどり着けるようになる。
例えばこの水のボトル。右手だけではキャップを取ることができない。左手でボトルを支えれば取れる。ここで「手を添えるんだ」と言うだけではダメだ。生徒はまた失敗する。ぎゅっと握るというところまで言わなければならない。これでキャップが取れる。教える時間を短縮する、というのはこういうことだ。知らなければずっとボトルが空回りするわけだからね。いろんな方法を試したり、手を変えてみたりとか。
教えられる時間はものすごく限られているから、より早い理解への道筋に乗せるのはとてもとても大事なことだと思っている。その方法を常に考えているんだ。よりよいシューターに育てるにはどうするか。自分で自分のミスを正せるようにするにはどうするか。どこかで僕の手が離れるわけだからね。僕がいなくても努力を続ける方法を学んでもらわないといけない。
クリス・コスタ:
教えることは一つじゃない。銃を撃つ以外のこともまた一緒に教えなければいけない。水のボトルを生産する方法を学ぶには、生産工程やその管理もまた学ばなければいけないように。銃も撃つだけでなくメカニズムを学ぶ必要がる。
クラスの多様性もまた重要だ。レベルの差や取り組み方の違いもある。ちょっと優秀な生徒には負荷も上げてやらなければいけないし、怒鳴ったりするかもしれない。普通の生徒だったら、怒鳴られると慌ててしまって学びが遅くなる。いろいろ失敗したりね。よい生徒はストレス下で、よい動きをすることができる。
あらゆる生徒は一人ひとり違うんだ。怒鳴られても平気な人もいるしそうでない人もいる。軍人もいればコンピューター屋さんもいたり、医者がいたり弁護士がいたりする。接し方も変わるだろう。有名企業の経営者や億万長者もいる。普段なら話しかけると怒らせてしまうかもしれないけれど、そういう人たちを泥まみれにしたりする。彼らは大喜びだ。
とにかくクラスに来る人はみんな本当に違うんだ。例えば奥さんと一緒に来たりする人もいる。みんなに平等に、柔らかく接するというのは一つの答えだし、あるいは一人ひとりにまったく違う接し方をするというのも答えだ。みんな違うのだから学び方も違ってくるだろう。
MilitaryBlog:
そうして一人ひとりが違うわけですが、そうした生徒たちの違いを理解し、接するにあたり何が最も注意すべき点というのはなんでしょうか。
クリス・コスタ:
それは難しい質問だね。まず生徒とトピックの関連する点を探すと思う。
例えばコンピューターエンジニアに射撃の基礎を教えるとしよう。彼はWebページを作っている。そこで彼に「このかっこいい写真をWebに今すぐあげたいんだ」と言ったとしよう。でも彼は「そりゃムリだ」という。「コードを書いて、ページを作って、そしたらここに載せることはできる」って段階を説明してくれるはずだ。彼に射撃を理解してもらうのも同じことだ。
「君がコードを書く時はどうする?」といえば理解してくれる。射撃とWebページ、違う課題だけど同じことを話している。基礎原理とはコードだ。コードを書けば、射撃もできる。もっと難しいことをする時はどうか。「この写真をクリックしたら他の5枚がぱぱっと開くようにしてほしい」というのと同じで「分かった。でもそのためにはさらにたくさんのコードが必要だ」となるだろう。
中には基礎的な部分を見ない人もいる。結果だけを求める人達だ。でもWebに写真を上げるのと同じように、そういうやり方ではうまくいかない。
手術のようなものだ。いきなりメスで切り始めたりはしない。手順に従って手を動かし、診断する。生徒が何で苦しんでいるかをよく見極めて、わかりやすくなるよう物事を分割していく。彼の世界との関連づいていることはなんだろうか。僕がやっていることと紐付けられることはなんだろうか。そのほうがよりなじみやすくなる。
聞き手: dna_chaka
パート4へ続きます。
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