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医療系ギアを開発するチヌーク・メディカル・ギア社にみるアメリカでの装備事情

メーカー訪問
技術やノウハウは日々進歩しているため、支給品の装備はすぐに時代遅れになる。日本の組織でも「私物」のギアを使用している例をよく見かけるようになった。これらのギアは俗に「タクティカル・テイラー」と称される様々なメーカーが企画・開発を行っているが、その中の一つ、医療系ギアを扱うアメリカのチヌーク・メディカル・ギア社を訪問し、ギア事情を取材した。

チヌーク・メディカル・ギア社はアメリカ中西部・コロラド州の南部にあるデュランゴに所在する。


古くから鉱山の街として栄え、現在は観光地としての側面を持つ一方、コロラド・ユタ・ニューメキシコ・アリゾナの4つの州が接する「フォーコーナーズ」エリアの中心的な存在として、物流基地が整備されている。多くのメーカーが人口密集地や軍基地の周辺に拠点を持つ中、チヌーク・メディカル・ギアはこの地を拠点に25年間、医療系タクティカルギアの開発に携わってきた。


チヌーク社のオフィス。


商品はここに集積され、カスタム内容に合わせてパッキングされる。


近年、退役した兵士達が起業する例が増えており、政府も退役兵の社会復帰対策として様々な助成を行っている。中でもギアメーカーや納入業者は軍時代のノウハウやコネクションをそのまま利用できる職種であり、マガジンポーチやプレートキャリア、ホルスターといった「花形装備」では競争も激しい。

そうした中、チヌークは医療系ユニットのためのギア開発という市場を選んだ。支給品のギアの性能と、現場の要求するレベルには常にギャップが存在し、そこにビジネスチャンスが存在する。医療系のような特化したギアほどニッチなニーズが存在し、チヌークはそこで揺るぎない立場を築いている。

汎用性が狭くなるため、マーケティング活動は見本市への参加などに限っているが、医療分野についてはエキスパートであるということから口コミで安定した受注があるようだ。ギアメーカーは通常、雑誌広告などに加えて講習会やトレーニングなどを主催するなどして潜在的な顧客への認知を広げているが、チヌークは企画・開発に資源を集中している。

見本市のための物資集積所。何箱ものペリカンケースに展示用商品が梱包されている。


新製品の海兵隊向け医療パッケージ。


バッグやケースのストックに加えて、医療品やキットも大量に在庫されている。チヌーク社では原則として、ギアとカスタマイズされたキットを合わせて納入している。


日本のメーカーのメディカルツールがいくつか見られた。

メーカーとしての目標はもちろんNSN番号の獲得 つまり軍の制式装備に選ばれることである。しかしこれはどのギアメーカーにも共通する目標であり、その競争は激しい。加えて医療系ギアは中身の医療キットありきの存在であり、そのキットの更新は数年に一度である。

このため主な顧客は予算が比較的自由な特殊部隊や、司法・行政の救急チームなどの小・中規模な組織となる。こうしたチームを狙い以前はギアを景気よくバラまくようなメーカーも存在していたが、今ではそのような行為は制限されている。特殊部隊の場合、新規ギアはまずごく少数、2~3点が納入され厳しい評価テストが行われるという。

一言で「医療系ギア」といっても、その構成要素は様々だ。使用するユニットによって最適なキットの内容は違うし、機材の進化によって量も増減する。例えばAED装置や血中酸素濃度を計測するパルスオキシメーターなどはポータブル化が進み、必須の装備になって久しい。チヌークは現場に近い組織との対話を繰り返すことで成長していった。現在はギアに加え、バンデージや緊張性気胸用のチェストシール、減圧ニードルなどキットそのものの企画・提案を行っている。

サンプルがかけられた壁。中身であるキットが収まるかどうかのフィッティングに用いられるようだ。

独立したバッグ、ケースだけでなくバックパック用のインサートなど、様々なスタイルのギアバッグが並んでいる。

ユニークなところでは、服の下にコンシールできる応急処置キットポーチがある。これは警察組織からの要望で作られたもので、私服の捜査官が目立たずキットを携行できるようにするものだ。強制立ち入り検査で負傷者が発生する可能性は低くない。かといって私服の捜査官が医療キットをぶら下げて周囲をうろついていては、捜査対象に検査があることを知らせているのと同じであり、そのためこうした目立たない携行手段が必要となる。


近年のチヌーク・タクティカルでは、応急処置とMEDEVAC(後方の医療施設への送致)の間を埋める「Prolonged Field Care(PFC)」の研究と対応が進められているとのこと。敵陣深く浸透する特殊部隊・空挺部隊では負傷兵を後方に送るのが難しい。PFCでは従来の応急処置よりもはるかに高度な医療的処置を現場の限られた機材で行い、長期間の生命維持を目指している。

また、いわゆる「タクティカル市場」以外へのラインアップの多様化も目標の一つだ。例えば大災害の際の持ち出しキットや支援物資などは、関心も高まりつつあり、大量の需要が見込める分野となる。

装備品はどれもそうだが、特に医療系ギアの性能は生死に直結している。アメリカでは様々な企業が、現場の人たちの命を守るためという認識を持ち、互いに競争しつつギアの性能を高め続けているということが改めて認識できた取材だった。

C-Tours LLC | travel agency for "Tactical Professionals"
http://c-tours.net/
Photo & report: dna_chaka


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