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防衛技術シンポジウム 2014

自衛隊・米軍装備展示
2014 年 11 月 11 日と 12 日の 2 日間、ホテルグランドヒル市ヶ谷において、防衛省技術研究本部が行っている陸・海・空自衛隊の兵器などの研究・開発について紹介する『防衛技術シンポジウム 2014』が開催された。

防衛技術シンポジウムは毎年開催されており、例年のごとく今年も開場時から多くの人であふれ、防衛技術に対する関心の高さが伺えた。

今年は次世代の戦闘機や護衛艦、戦闘車両といった大型兵器の展示は少なく、無人化やロボット、基礎研究などの展示が目立った。また大学や他の機関との共同研究の展示も増えていた。
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ポスターと案内図。大学や他の機関との共同研究を行う例が増えていることから、講演やパネルディスカッションも防衛省以外からの登壇者が多い。

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直巻マルチセグメント・ロケット・モーターの研究。

ミサイルなどに使われている固体燃料を使ったロケットの性能向上を目指したもので、従来よりもより軽く、またより効率的に推進剤を充填できるようになっている。

一般的なロケットモーターは、推進剤に「光芒」と呼ばれる溝が掘られている。この溝によって推力がなめらかに変化なるようになっている。もし光芒がなければ、点火直後の推力は小さく、徐々に上がって、最後はいきなり推力がなくなる、という使いづらいロケットモーターになってしまう。だが、溝があるということは、その分、推進剤が入っていない無駄な空間があるということでもある。

固体ロケットにはもうひとつ、応力緩和スロットという別の溝もある。固体ロケットはまずモーターのケースを用意し、そこに高温の推進剤を流し込み、冷やして固める、という製造方法が一般的だ。しかし充填時や硬化時、そして使用時にはそれぞれ温度が異なるため、熱収縮でヒビが入ってしまう可能性がある。ヒビが入ると、固体ロケットは異常燃焼を起こすなどし、爆発する可能性もある。そこで、あらかじめ応力緩和スロットを掘っておくことで、推進剤の熱収縮の動きを吸収するようになっている。しかし、ここでもやはり、溝があるということは、その分無駄がある、ということになる。

そこでこの研究では、推進剤から光芒をなくし、その代わりに燃える速度が違う推進剤をいくつかに分けて (マルチセグメント) 充填することで、推力の変化を実現した。また、推進剤を先に形作っておき、常温の状態でカーボン樹脂繊維を巻きつけてモーターケースを作ることで、応力緩和スロットを不要にしている。

これにより、従来よりも軽くミサイルを造ったり、あるいは従来と同じ大きさでも、より長い時間飛行できるミサイルを作ることができるという。

防衛技術シンポジウム 2014
将来戦闘機に向けた航空機システム技術の研究。

防衛技術シンポジウム 2014
3D プリンターで作られた、将来の護衛艦のコンセプト・モデル。平面を多用した、ステルス性を意識した形をしている。

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航空機・車両用の防護マスクの研究。開発用の「呼吸マネキン」の展示もあった。

防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
統合防空システムのシミュレーションや、統合戦闘システムの検討例の解説パネル。

防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
「爆発物対処用ロボットI型」。遠隔操作によって、爆発物を破壊、もしくは爆破処分することを目的としている。

防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
その他にも無人化、ロボット化の研究は多く紹介されていた。

防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
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防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
「手投げ式偵察ロボット」。建物内の死角や隙間に進入して、情報収集を行うことを目的としている。

普段はボールのような形をしており、走行時には四輪駆動のロボットへ変形する。変形や操縦はスマートフォンほどの大きさの端末で行うことができ、またロボットにはカメラが内蔵されており、送られてきた映像を見ながら操縦することができる。

タイヤ部分には、やや硬いスポンジのような素材が使われている。

操縦は端末の左側にあるアナログスティックを使う。操縦性は普通のラジコンカーと変わらないように感じられたが、やはりロボットから送られてくる映像を見ながらという点で、少し慣れが必要だろう。またトルクの強いモーターを使っているためか、抵抗の大きい絨毯の上でも順調に走った。

ロボットと端末との通信は通常の無線 LAN で行われており、その他にも市販の部品 (いわゆるCOTS品) が多く使われ、コストが抑えられている。

「手投げ式」とはなっているが、現段階では衝撃に弱いため「手投げ」はできず、「そっと入れる」ことしかできないという。今後は、この耐衝撃性をどうするか、またロボットが自律して行動するような機能を持たせるかどうか、といった部分の検討、研究を行っていきたいとのことだ。

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国産誘導弾システムの紹介。

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先進 SAM (地対空ミサイル) の風洞試験模型。

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将来のヘリコプター用エンジンとして開発が進められている XTS2-10。現在運用されている OH-1 のエンジン TS1-10 を基にして開発されている。すでに地上での試験が完了し、飛行試験を行う用意が整ったとのことだ。
撮影は禁止であったが、燃焼器やタービンなどの実物も展示されていた。

防衛技術シンポジウム 2014
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水中グライダー。グライダーというだけあって、スクリューなどの推進機関は装備しておらず、浮力の変化によって進む。また実際に駿河湾で航走試験も行われている。

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防衛技術シンポジウム 2014
CBRN 対応遠隔操縦作業車両システムの研究。CBRNとは Chemical (化学)、Biological (生物)、Radiological (放射性物質)、Nuclear (核) の頭文字から取られており、これらによって汚染され、人が近づけなくなった地域に入り、遠隔操縦で作業を行えるようになっている。

防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
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軽量戦闘車両システム。航空機で輸送できるような軽い戦闘車両を造ろうとすると、大きな火砲を載せられない、地雷等の爆発に耐えられない、という問題が出てくる。

そこで 15 t 程度と軽いながらも、大型かつ反動が小さな火砲を搭載したり、また爆風をそらす形状や、車高を変化できるような機構を持たせて耐爆性を向上させた車両の研究が進められている。

車輪ハブの内側に組み込まるモーターや、低反動砲の弾の展示もあった。

防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
スタンダード・ミサイル 3 (SM-3) の次世代型 SM-3 Block IIA の研究解説。

防衛技術シンポジウム 2014
防衛技術シンポジウム 2014防衛技術シンポジウム 2014
即席爆発装置 (IED) 対処システムの試作品。IED はありあわせの材料で造られた爆弾のことで、アフガニスタンやイラクでは、ハンヴィーや装甲車がこの IED の被害に遭い、MRAP が導入されるきっかけとなった。

IED はありあわせの材料で造られるということから、姿かたちや大きさなどは千差万別で、設置場所や形態もまた様々だ。このシステムでは、地中に埋められた IED はマイクロ波レーダーで探知し、また地表に置かれた IED はミリ波レーダーで探知し、さらにレーザーを使いその形を識別することができるという。

またレーダーは比較的近距離にしか飛ばさないため、消費電力も現実的な数値だという。

現在はまだ試作段階で、画像処理などの関係から、停止した状態でなければ探知などはできないとのことだが、将来的には車列の先頭にこのシステムを積んだ車を走らせることで、リアルタイムに IED を発見し、ルートの迂回や、処理などの判断に役立てたいとのことだ。

なお米国などでも同様のシステムは研究中だという。

試作品を積んだ車両の展示も予定されていたが、雨のため中止された。

Photo & Text: 鳥嶋真也 - FM201411


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